OMOとは:リアルとデジタルの統合で新しい体験価値を生み出す
OMOは「Online Merges with Offline」の略であり、日本語では「リアルとデジタルの融合」などと訳されます。台湾系アメリカ人でGoogleチャイナの元CEOである、李開復(カイフ・リー)氏が提唱した販売戦略です。
OMOはリアルとデジタルを単純に融合するのではなく、融合した上で新しい体験価値を生み出すところに大きな意義があります。
従来の店舗・ECサイト経営において、リアルとデジタルは個別のチャネル(販売・集客経路)として管理されていました。顧客の購入プロセスのデジタル化が始まった時代ならそれだけで十分でしたが、現在ではリアルとデジタルを融合した上で新しい体験価値を提供できなければ、競合優位性が著しく低下してしまいます。
そこでリアルとデジタルを融合するだけでなく、生成されるデータやさまざまなツールを活用し、新しい体験価値を提供することに重きが置かれるようになりました。
O2Oとの違い
O2Oは「Online to Offline」の略です。リアルからデジタルへ、あるいはデジタルからリアルへと顧客の行動を促すのが主な目的となります。
O2Oはリアルとデジタルで異なるチャネルを持ち「双方間の送客」を促すことなので、OMOのようにリアルとデジタルの融合は行いません。
マーケティング界隈でO2Oが大きく注目されていた時期もありましたが、現在ではOMOの方がより戦略的かつ効果的なマーケティングとして注目されています。
オムニチャネルとの違い
OMOとの違いがわかりにくいのが「オムニチャネル」という販売戦略です。オムニチャネルには「チャネルの統合」という意味があり、企業が持つさまざまなチャネルを統合し、顧客にチャネルごとの分断を意識させないことで売上を伸ばそうという販売戦略となります。
たとえば、SNS広告で気になった商品をクリックし、ECサイトで商品を購入し、さらにECサイトで購入した商品を店舗で受け取りました。これがオム二チャネルです。顧客はチャネルごとの分断を意識せずにショッピングを楽しめます。しかし、「顧客の体験価値向上」という視点がないため、OMOとは呼べません。
これだけではOMOとオムニチャネルの違いがわかりにくいと思うので、次章でOMOの具体例をご紹介します。
OMOの具体例
それではOMOの具体例を、実際のOMO事例を参考にしながらご紹介します。
LINEを活用した継続的な接客サービス|Brillar
日本初のモアサナイト専門ジュエラーであるBrillar(ブリジャール)は、店舗・ECサイト・LINEという3つのチャネルを融合した上で、顧客に高い体験価値を提供しています。
Brillarでは店頭で接客した顧客に対してLINE公式アカウントの友だち追加を促し、追加してくれた顧客には接客内容を踏まえてカスタマイズされた情報をLINEで発信しています。
たとえば顧客が気になっている商品の画像・詳細と顧客のサイズ案内、ECサイトで直接購入可能なリンクをカルーセル(横スライド可能な画像)としてLINEで個別配信します。顧客は帰宅後も継続的な接客を受けられ、よりじっくりと商品購入を検討できるため、体験価値の向上に貢献するOMO施策の一つです。
もしもこれが、「接客後にECサイトを案内する」だけならオム二チャネルですが、Brillarでは顧客の体験価値を重視した継続的な接客と、終始顧客に寄り添った提案をすることでOMOを実現しました。
参考:Shopify×LINEの連携で顧客もスタッフも利便性を向上|Brillar(ブリジャール)【事例インタビュー】|Lipify
OMOが注目された背景
OMOが注目された背景には、顧客の購入プロセスの変化や情緒的価値をより重視するようになったことが挙げられます。
購入プロセスの変化については、すべての店舗経営者が理解しているようにデジタル化が進んでいます。「店舗で検討してECサイトで購入する」は当たり前、近年では店舗・ECサイトに加えてSNSなど購入プロセスが多様化しています。この購入プロセスに対応するためには、リアルとデジタルの融合が欠かせません。
さらに、多くの顧客が「情緒的価値」をより重視するようになった点も重要なポイントです。情緒的価値とは商品・サービスを通じて得られる幸福感・優越感といった、数値として表せない価値を意味します。
たとえばスターバックスコーヒーは他のカフェチェーンに比べて高い情緒的価値を提供することで、顧客は1杯500円以上のフラペチーノを喜んで購入します。ちなみにスターバックスコーヒーの情緒的価値とは、「サードプレイス(第三の場所)として居心地に良い空間を提供すること」です。
スターバックスコーヒーはインテリアやBGMで居心地の良い空間を演出するだけでなく、スタッフとのコミュニケーションを楽しめる場でもあります。そのような情緒的価値が高額商品にも納得感を生み、顧客をファンとして取り込む要素になっているのです。
言い換えれば、顧客は商品・サービスを通じて得た情緒的価値を自動的に金銭的価値に変換し、商品・サービスそのものの価値やコストパフォーマンスを判断していると考えられます。
店舗・ECサイトの運営においてOMOを実現すれば情緒的価値を高められ、ひいては「顧客に選ばれるブランド」として成長できるということです。
OMOのメリット
続いて、OMOによりリアルとデジタルを融合することでどのようなメリットがあるのかをご紹介します。
1. 質の高い顧客体験(CX)を提供できる
OMOを実施することで、従来よりも精度の高いパーソナライズが行えるようになります。顧客ごとに最適な商品・サービスを提供できれば質の高い顧客体験(CX)を向上し、ブランド価値の向上にもつながるでしょう。
2. リピート率向上でLTVを最大化できる
質の高いCXを提供しブランド価値を高められれば、リピート率の向上が見込めます。新規顧客ばかりだったブランドでも顧客と中長期的な関係を築き、売上アップに貢献できるでしょう。これによるLTV(顧客生涯価値)の向上により、売上アップだけでなく口コミの拡大や、より多くのファン獲得に貢献します。
3. リアル・デジタルのデータを活用できる
リアルとデジタルのチャネルを融合するだけでなく、データまで融合できれば新しいインサイト(洞察)を獲得することも難しくありません。たとえば、特定の顧客層がリアルとデジタルでどのような購入プロセスを持っているのかを割り出せば、より効果的・集中的なマーケティングを展開できます。これによりマーケティング効果と費用対効果の向上が見込まれるでしょう。
4. 売上アップ・工数削減を実現できる
ここまでご紹介したメリットにより、店舗・ECサイトにおける売上アップと工数削減を実現できるのが、OMO最大のメリットです。
質の高い顧客体験の提供とリピート率の向上により、店舗・ECサイト双方における売上アップに大きく期待できます。たとえば、実店舗やショールーム、ポップアップストアにご来店した顧客に対し、後日ECサイトで同じ商品を見てもらえれば購入率は高くなります。店舗・ECサイトのどちらもで使えるポイントやクーポンの発行も、売上アップに寄与するでしょう。
一方で、従来は二重に手間がかかっていた商品データや在庫データの管理は一元化され、顧客管理も統合できます。店舗・ECサイト経営における工数を大幅に軽減しつつ、マーケティングや商品企画にかけるリソースを生み出せるのもOMOの利点です。
顧客側から見たOMOのメリット
OMOを実施してメリットがあるのは店舗側だけではありません。顧客側から見ても多くのメリットがあり、それこそが顧客の体験価値を高める要素となります。
たとえば前述したBrillarの事例では、顧客やLINE公式アカウントを友だち追加することで自分だけにパーソナライズされた情報を受けれるようになります。さらにLINE上でメンテナンスの案内なども受け取れるため、メンテナンス時期を意識することなく、面倒ごとを省けるのも顧客側の大きなメリットです。
このようにOMOには顧客側から見たメリットも多く、そうした「体験価値の向上」を中心に据えて取り組むことで、より効果の高いOMO施策を展開できるようになります。
OMO導入のポイント
ここでは、OMO導入を検討している方に向けて導入のポイントをご紹介します。4つのポイントを意識して、失敗のないOMO導入を目指しましょう。
OMOの目的・目標の明確化
OMO導入でまず意識すべきポイントは、「目的と目標の明確化」です。ここまでOMOの主な目的は「リアルとデジタルの融合による体験価値の向上」と説明しましたが、これはあくまで大局的な目的となります。つまり、OMOを導入する企業・店舗ごとに明確な目的と目標が欠かせません。
たとえば、ECサイトを運営しているものの店舗経営との融合をまだ行っておらず、なおかつ免税対応も済んでいないなどの課題を抱えていると仮定します。この場合、単純なOMOを目的とするのではなく、「インバウンド需要(外国人観光客)も取り込めるようなOMO施策」が主な目的になるでしょう。
このように、企業・店舗ごとに明確な目的を持つことで、OMO施策として何をすべきかの方針が固まります。さらに、具体的な数値と期間を持って目標を立て、OMOを計画的に推進できるようにしましょう。
目的に合ったOMOツールの選定
OMOを導入するためには専用のOMOツールが欠かせません。しかし、OMOツールと一口に言っても多種多様なITツールが存在するため、目的にあったOMOツールを選択することが重要です。
たとえば「店舗経営とECサイト運営を強力に連携させたい」という場合は、Shopify(ショピファイ)でECサイトを運営する上で、Shopify POSを導入するのがおすすめです。店舗・ECサイトのあらゆるデータをリアルタイムに統合でき、リアルとデジタルをまたいだデータ分析が可能です。
もちろんデータ分析だけでなく、顧客に提供する商品・サービスの、リアルとデジタルの融合まで容易になります。明確な目的・目標を持ち、適切なOMOツールを選定できれば、OMOの8割は完了したようなものです。
スモールスタートで始める
OMOを導入する際は、スモールスタートで始めましょう。スモールスタートとは「小さく始めて大きく広げる」といった、OMO導入のセオリーです。
OMO導入初期は大々的に実施するのではなく、まずは特定分野でのリアルとデジタルの融合を始めましょう。たとえば、ECサイトで購入した商品を店舗で受け取り・返品・交換できるようにしたり、リアルとデジタルをまたいだデータ分析だけを始めたり、特定の分野だけでOMOをスタートさせてみてください。
そこで得られた成功・失敗の体験をもとに、OMO施策を少しずつ広げていきましょう。スモールスタートで小さな成功体験を素早く積み重ねれば、OMO実施における自信にもつながります。
データ活用を段階的に進める
データ活用を段階的に進めるのも重要なポイントです。OMOを実施するとリアルとデジタルでさまざまなデータを収集できるようになります。ただし、データを活用できる範囲は非常に広いため、段階的に進めなければデータ活用の目的を見失ったり、取り組みそのものが頓挫するケースが少なくないので注意してください。
「スモールスタートで始める」と同じように、データ活用もまずは小さいところから始めましょう。ECサイトで得られた顧客データをどうやって店舗経営に活かすのかなど、特定の分野でデータ活用を始め、対象範囲を少しずつ広げていきます。
また、最初はOMOツールに備わっているデータ分析機能を利用し、段階に応じてBI(高度なデータ分析ツール)を検討するなど、データ分析ツールについても段階的に検討することをおすすめします。
OMOを気軽に始めるには
それでは最後に、OMOを気軽に始める方法をご紹介します。その方法というのは、「Lipify(リピファイ)」を使ってShopifyで運営するECサイトと、LINEを連携するという方法です。
LINE連携アプリ「Lipify」とは
当社が開発・運営しているLipifyは、Shopifyで構築・運営しているECサイトとLINEを気軽に連携できるアプリです。Shopifyアプリストアからインストールし、シンプルな設定ですぐにShopifyとLINEの連携を始められます。
また、月額9ドル(1,305円)という業界最安級の価格で始められるのも大きな特徴です。「まずはShopifyとLINEを連携して何ができるのか試したい」という方のために、無料で使えるフリープランもご用意しています。
「Lipify」の3つの特徴
Lipifyには気軽なOMO導入をサポートする、3つの特徴があります。
- LINEで顧客と個別にやり取りできる
- 店頭でLINE会員登録を促せる
- LINE上で会員バーコードを表示できる
LipifyをインストールしたECサイトなら、LINE公式アカウントの友だち追加をしてくれた顧客と個別にやり取りができます。本記事でご紹介したBirillarの事例でも、LINEを使ったコミュニケーションの実現方法として、Lipifyを導入いただいています。
また、セグメントを設定して特定の顧客グループにだけメッセージを配信することも可能です。セグメントごとに異なるメッセージを配信し、パーソナライズされた情報提供も行えるようになります。
さらにLipiryで発行したQRコードを店頭POPに表示すれば、顧客はQRコードを読み取るだけで友だち追加やLINEのID連携が可能です。会員バーコードをLINE上で表示できるようになるため、顧客データの取得が従来よりもグッと楽になります。
「Lipify」でOMOを始めよう
ここまでご紹介したOMOの内容から、「大々的な取り組みが必要」と感じている方も多いでしょう。実際のところ、大手小売店は大々的にOMOに取り組んでいますが、中小の小売店ではOMOに対してミニマムに取り組み始めることが重要です。
LipifyならShopifyとLINEを効率よく連携し、店舗経営者またはECサイト運営者の「気軽なOMO導入」を実現できます。また、OMO戦略の実現に向けたサポート体制も整っているので、「OMOを導入しているけど何から始めればいいかわからない」という方も安心してご相談ください。
まとめ
本記事では、OMOの基礎知識やOMOを気軽に始める方法をご紹介しました。OMOは、O2Oやオムニチャネルなど従来のマーケティング戦略に代わる、革新的な戦略です。
リアルとデジタルの境界線が曖昧になりつつある現代だからこそ、OMOに積極的に取り組み、顧客の体験価値を積極的に高めていくべきでしょう。これを機にOMOの導入を、それを支援するLipifyの導入をぜひご検討ください。